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具体例で学ぶマージンコール! ロスカットを未然に防ぐ

マージンコールでリスク回避

前項ではロスカットに関して解説しました。
ロスカットは皆さんの資産を守る最後の砦ですが、基本的には全てのポジションが決済されてしまうため、あるポジションでロスカットになると、利益が出ているポジションまで決済されてしまうことが最大のネックとなっています。

つまり、ロスカットされると損失も限定してくれますが、他のポジションで発生している利益まで限定してしまうのです。

今回開設するマージンコールは、ロスカット一歩手前の危険状態を知らせてくれる機能です。
これがあることで、ロスカットの前に対象となるポジションのみを決済するのか、それとも別の方法をとるのか、選択肢を増やすことが可能です。

あと2週間でブラジルW杯ですが(2014年5月29日現在)、ロスカットがレッドカード<だとすると、マージンコールはイエローカードと言える機能です。

マージンコールの発動基準はおよそ証拠金維持率100%強

マージンコールはロスカットの一歩手前です。

「これ以上放置するとすべてのポジションを決済しますよ!」

という、FX取引会社からFXトレーダーへの警告です。

多くの場合証拠金維持率が50%となった時点で発動

マージンコール発動のタイミング

ロスカット同様、マージンコールが発動される基準はFX取引会社・口座によって異なります。

しかし、多くの場合、証拠金維持率が100~150%程度になった時点で発動されることが多いようです。

マージンコールが発生した場合の選択肢は大きく2つ

マージンコールが発生したら、ロスカットを避けるためにすぐにでも何かしらの対応をしなければなりません。
具体例を参考に、マージンコールが発生した場合の対応に関して勉強してみましょう。

マージンコールは基本的に証拠金維持率が下がっていることが原因です。
従って、証拠金維持率を上げることで、解除することができます。

証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100

証拠金維持率は上記の式で求められるため、その数値を上げるための選択肢は2つあり、「有効証拠金を増やす」か「必要証拠金を減らす」かです。

具体的に言いますと、
・有効証拠金を増やす=「追加証拠金を支払う」
・必要証拠金を減らす=「ポジションを決済する」
となります。

(例)
■ 基本条件
・取引証拠金:10万円
・レバレッジ:すべて20倍
・マージンコール:証拠金維持率130%で発動
・ロスカット:証拠金維持率50%で発動

■ 持っているポジション
①ドル/円 ⇒ 1ドル100円で2000ドル購入
②ユーロ/円 ⇒ 1ユーロ130円で2000ユーロ購入
③ポンド/円 ⇒ 1ポンド170円で2000ポンド購入

□ 必要証拠金
① ドル/円
1ドル100円 × 2000ドル ÷ レバレッジ20倍 = 1万円
② ユーロ/円
1ユーロ130円 × 2000ユーロ ÷ レバレッジ20倍 = 1万3000円
③ ポンド/円
1ポンド170円 × 2000ポンド ÷ レバレッジ20倍 = 1万7000円

必要証拠金合計:4万円
証拠金維持率:10万円÷4万円×100=250%

□ 為替相場の変動
ドル/円:1ドル90円
ユーロ/円:1ユーロ110円
ポンド/円:1ポンド180円

□ 評価損益・有効証拠金・必要証拠金・証拠金維持率
・ 評価損益
① ドル/円
(90円-100円)× 2000ドル = -2万円の評価損
② ユーロ/円
(110円-130円) × 2000ユーロ = -4万円の評価損
③ ポンド/円
(180円-170円) × 2000ポンド = 1万円の評価益

・ 評価損益合計:-2万円-4万円+1万円=-5万円の評価損

・ 有効証拠金:10万円-5万円=5万円

・ 必要証拠金
① ドル/円
1ドル90円 × 2000ドル ÷ レバレッジ20倍 = 9000円
② ユーロ/円
1ユーロ110円 × 2000ユーロ ÷ レバレッジ20倍 = 1万1000円
③ ポンド/円
1ポンド180円 × 2000ポンド ÷ レバレッジ20倍 = 1万8000円

・ 必要証拠金合計:3万8000円

・ 証拠金維持率:5万円÷3万5000円×100=132%

証拠金維持率が150%を切ってしまったため、マージンコールが発生します。

選択肢1:有効証拠金を増やす=追加証拠金を預け入れる

追加証拠金を支払う

追加証拠金を新たに口座へ振り込めば、有効証拠金を増やすことができます。

5万円を新たに口座に振り込むと仮定
取引証拠金:10万円+5万円=15万円

・有効証拠金:15万円-5万円=10万円
・必要証拠金3万8000円
・証拠金維持率:10万円÷3万8000円×100=263%

このように証拠金維持率があがり、マージンコールは解除されます。

ただし、追加証拠金を支払ってポジションを継続することは、さらなる損失を招く可能性があるため、あまりお勧めしません。

選択肢2:ポジションを決済する

決済する

ロスカットは持っているポジション全てが決済されてしまいますが、マージンコールの時点ではポジション単位での決済が可能です。

マージンコールは皆さんがお持ちの口座単位で、証拠金維持率を基に発動されます。

従って、持っているポジションをいくつか決済することにより、証拠金維持率を調整してマージンコールの状態から抜け出すことが可能です。

今回の例ですと、いずれかのポジションを決済するとそれぞれの評価損益が確定されるため

①を決裁した場合
取引証拠金:10万円-2万円=8万円
有効証拠金:8万円-4万円+1万円=5万円
必要証拠金:②+③=1万1000円+1万8000円=2万9000円
証拠金維持率:5万円÷2万9000円×100=172%

②を決裁した場合
取引証拠金:10万円-4万円=6万円
有効証拠金:6万円-2万円+1万円=5万円
必要証拠金:①+③=9000円+1万8000円=2万7000円
証拠金維持率:5万円÷2万7000円×100=185%

③を決裁した場合
取引証拠金:10万円+1万円=11万円
有効証拠金:11万円-2万円-4万円=5万円
必要証拠金:①+②=9000円+1万1000円=2万円
証拠金維持率:5万円÷2万円×100=250%

このようになり、どのポジションを決済しても証拠金維持率が150%を超えるため、マージンコールは解除されます。

どのポジションを決済するかについては、その時の相場の動向や有効証拠金の残高など、さまざまなことを鑑みて判断するのが良いでしょう。

マージンコールは投資方法を見直す目安ともいえる

マージンコールはすなわち、FX取引会社から

「あなたの取引状態まずいですよ!」

と言われている形なので、マージンコールが発生したら、その対象となっているポジションだけでなく、FX取引のセク船全体を再考してみましょう。
それ以降の取引方法を改善していく機会にすることで、より安全で確実な投資をすることができます。

マージンコールを放置するとロスカットされる可能性が高い

マージンコールを放置した場合

相場が好転⇒マージンコール解除
相場がそのまま進行⇒ロスカット

となります。

もちろん、相場が好転して証拠金維持率が自然に上昇、マージンコール解除という可能性もあります。
しかしそんな運のいい話はめったにありませんので、基本的にはロスカットに移行されるものと考えた方がいいでしょう。

今回の例で言いますと、下記の様にロスカットされる可能性が高いです。

□ 為替相場の変動
ドル/円:1ドル80円
ユーロ/円:1ユーロ90円
ポンド/円:1ポンド185円

□ 評価損益・有効証拠金・必要証拠金・証拠金維持率
・ 評価損益
① ドル/円
(80円-100円)× 2000ドル = -4万円の評価損
② ユーロ/円
(90円-130円) × 2000ユーロ = -8万円の評価損
③ ポンド/円
(185円-170円) × 2000ポンド = 3万円の評価益

・ 評価損益合計:-4万円-8万円+3万円=-9万円の評価損

・ 有効証拠金:10万円-9万円=1万円

・ 必要証拠金
① ドル/円
1ドル80円 × 2000ドル ÷ レバレッジ20倍 = 8000円
② ユーロ/円
1ユーロ90円 × 2000ユーロ ÷ レバレッジ20倍 = 9000円
③ ポンド/円
1ポンド185円 × 2000ポンド ÷ レバレッジ20倍 = 1万8500円

・ 必要証拠金合計:3万5500円

・ 証拠金維持率:1万円÷3万5500円×100=28%

証拠金維持率が50%を下回ったため、ロスカットが発動されて強制決裁されます。
-9万円の評価損が確定されるため、口座に残る残高は1万円となります。

まとめ

今回は詳細な具体例とともに、FX取引のマージンコール・ロスカットに関して説明しました。

しかし、そもそもしっかりとした取引戦略を立て、リスク回避をしていれば、どちらもそうお世話になることは無い機能です。

取引戦略の立て方等に関しましては、別ページにて解説しますのでそちらをご確認ください。

次回は、FX取引で用いられる重要な単位、「pip」について解説します。